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講演会参加記録帖
No.
2024/09/29 (Sun) 04:28:11

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No.23
2009/11/22 (Sun) 22:17:53

講演日 2009年11月22日(日)
会 場 東京芸術劇場展示ギャラリー(5階)
    14:00~16:30
講演者 近江吉明(専修大学文学部教授)
      1789年の陳情書の世界
      小井高志(立教大学文学部教授)
      マリー・アントワネットの最期


講演に先立ち、専修大学図書館の方から、ミッシェル・ベルンシュタイン文庫についての簡単な紹介があり、そのあと、最初の講演者である近江吉明教授が紹介されました。
あれ?どこかで見たことあるお顔だわ・・・と記憶をたどってみたら、2年前専修大で開かれたシンポジウムの会場で、ベルンシュタイン文庫資料を検索する端末操作を教えてくださった親切な方でした。まあ・・・・、教授様でいらしたのですね。きれいに整えられた口ひげと顎鬚が素敵な方です。還暦を迎えられたとおっしゃっていましたが、若々しくてとてもそんな風に見えないです。

世界的にも貴重なベルンシュタイン文庫の資料を研究していると、穴蔵みたいな収蔵庫にこもって仕事をするので、今日みたいに明るいところで講演ができてうれしいとおっしゃるその様子が、やんちゃな男の子みたいです。大好きなことを仕事にすると、苦労も苦労じゃないんでしょう。素人でも分かりやすいように噛み砕いてお話くださり、最後まで楽しく聞くことができました。

テーマは、ミシェル・ベルンシュタイン文庫に含まれている全国三部会開催に伴う第三身分の最終陳情書がどのような過程を経て作成されていったか、またその過程からフランス革命の実像に迫るというもの。
MB文庫の中には陳情書の資料が多数含まれているが、手書きのものが含まれており、それはまさにフランスにもないオリジナル資料で非常に価値が高いとのこと。フランス革命というと、「市民革命」と認識されているが、地方の農民や職人たちがどんな認識でいたのかを、陳情書を丁寧に読んでいくことで知ることができるとのこと。

第3身分の陳情書は、小さな地区から陳情書を代表が持ちより、その代表がさらに第二次の陳情書を作り代表を決定、最終的にバイイ・セネシャル(郡のような地区のことか?)単位で最終陳情書と代表がきまり、ベルサイユに赴いたそうだ。

その過程で、どのように陳情の内容が集約され、変化したか。それを具体的な例をあげて解説してくださったのだが、これが非常に興味深かった。小さな地区から出された陳情書は、税の重圧や不作による生活の困窮などを具体的に上げ、その改善を切望する素朴で現実的なものだったのが、二次・三次の集会を経る間に、生活感や具体性が消えていき、整理され、抽象化した要求項目の羅列へと変化していく。この変化がパリと地方のかい離を産み、民衆蜂起の騒乱へとつながっていく。自分たちの生活が改善されることを願う人々と、人権宣言などに代表される近代精神の確立を目指す層の望みは、時に対立するものでさえある。マスメディアの発達による情報伝達が人々をパニックに陥れ、農民蜂起を誘発する様などは、今までのフランス革命観を変えていく。

講演を聞きながら、ふと、沖縄の基地移転問題の事が頭に浮かんだ。実際に基地の騒音などに悩まされている沖縄の人々の願いと、国会や内閣の思惑のズレ。生活者の感覚と為政者の思惑。フランス革命での出来事は今も起きていることかもしれないとふと思ったりした。

歴史の評価も時代とともに変化していく。フランス革命に対する認識も、今後資料が読み解かれていくうちに変わっていくのかも知れない。

近江氏の講演の後、休憩時間に図書館職員の山岸拓郎氏が今回の展示品の丁寧な解説をしてくださいました。

小井高志氏(立教大学文学部教授)の講演テーマは、マリー・アントワネットの最期。マリー・アントワネットが日本の漆器コレクターだったことや、メディアによって、彼女が実像とはかけ離れた「モンスター」として喧伝されることによって、その悲劇的最期を迎えることになった様子などを紹介してくださいました。
メディアがもつ力の功罪をしみじみ感じました。

以前から思っていたのですけど、もし、ルイ16世が普通の王様のように、公的寵妃を持っていたならばマリー・アントワネットは悲劇の女王にならなかったかもしれない。ルイ16世は無能というより、むしろ知的でものがわかりすぎていて、八方塞がりの状況に優先順位をつけることができなかったんじゃないだろうか。
18世紀を知れば知るほど、あらゆるものがダイナミックに変化していった時代なんですよね。もしかすると現代社会の困難さを解決するためには、18世紀の歴史をもう一度常識にとらわれず見直していくことが有益なんじゃないかと思ったりします。

講演会は80名定員でしたが、70名くらいの参加者でした。大学の学生さんと研究者さん、意外にご夫婦連れなんて方もいらっしゃいました。
お土産に、展示品図録やクリアファイル、カレンダーなどもいただいて、専修大学さん太っ腹~!!でございました。




 

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