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講演会参加記録帖
No.
2024/09/29 (Sun) 04:32:46

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No.24
2010/01/16 (Sat) 22:59:56

講演日 2010年1月16日(土)14:00~16:00
講演者 岡田温司 京都大学大学院教授
会 場 東京都美術館 講堂

岡田温司氏の講演を聞くのは初めて。13時からのチケット配布に12時半から並んで、ひと桁台の整理券をゲット。ベストポジションの席を確保しました。240席の講堂は満席でした。やはりイタリア物は人気が高いです。

講演のタイトルから、ボルゲーゼ美術館の元となる作品を集めた人の話だろうか?と思っていたら、まったく違う話でした。

まず登場した岡田氏のスタイルにびっくり!忌野清志郎かと思っちゃいました。だって細身の体にぴちぴちぽい背広。頭が黄色いんです。目玉がぎょろんとしたどう見ても学者っぽくない人です。50代半ばと思われますが、お声もちょっと甲高い感じで一人のりつっこみ状態。始めっから最後までハイテンションでした。最近はこの手の講演会の時にはパソコン操作で画像を表示するのですが、どうも機械操作は苦手なご様子です。パワーポイントなんてソフトはお使いになれないのでしょう。せっせとホワイトボードに手書きされてました。なんだか、大学の大教室にいるような、そんな感じでとてもリラックスした雰囲気でした。

肝心の講演の内容は、なかなか興味深かったです。いろいろ講演会を聞きに行って感じたのは、学者さんというのは、こういう講演をなさる時に、まず自分はこれからこういう話をします、ときちんと範囲を設定なさるんですね。

今回の演題「作者を捜せ!ボルゲーゼ美術館と二人の目利き」の二人の目利きとは誰かというところから、始まります。19世紀後半ボルゲーゼ枢機卿のコレクションをもとにボルゲーゼ美術館が作られたときに、コレクションに含まれる作品の由来や帰属をはっきりさせましょうということになったそうです。その時活躍した、ジョバンニ・モレッリ(1818-1891)という美術鑑定家と、その次世代ロベルト・ロンギ(1890-1970)という美術史家が絵画作品をどのように鑑定し、特定の作家に作品を帰属させていったかということについて話が進んいきます。

モレッリはもともとは医師で、特に解剖学を学んでいて、絵画の鑑定をする際に、手や耳のように細部の画家が無意識に出してしまう癖のようなものを参考にするという「モレッリ方式」という鑑定術をつくりました。絵画作品の帰属について論文を発表し、美術界に新風を吹き込んだということですが、これは、18世紀から科学の近代化し、19世紀にさらに体系化されていったことと関係づけられるようです。いくつかのモレッリによる作品の帰属の例をあげて、モレッリの鑑定について興味深いお話を聞くことができました。モレッリの鑑定が、自分が標榜した鑑定法のみに依拠してされたものではないというところも面白かったです。

次いで、ロベルト・ロンギの鑑定法についてのモレッリとの比較対照がなされ、絵画作品の帰属を決める様々な視点についてのお話がありました。特に画家の初期作品の鑑定についてのお話が面白かったです。

結論的には、絵画の鑑定というものが、警察が行う鑑定(犯人探し)と相通じるものがあり、19世紀末から20世紀初頭の鑑識法の進歩と連動しているというところに行きつきました。

お話のあと、質問タイムが設けられ、いくつかの質問が出ました。

19世紀末から20世紀初頭になぜ、絵画の鑑定が盛んに行われるようになったのか?とい質問に対して、やはり近代国家の成立と国家の威信というものが関係するとのお答えでした。要するに、文化財の価値を国家がちゃんと値踏みしたいという需要があったということなんですね。オランダは今も国家をあげてレンブラントの作品調査をしているんだそうです。名もない画家の作品とされるのか、レンブラントの作品とされるのかでは、財産価値がまるで違うって事なんでしょう。なんだか、鑑定の世界は生臭いですねえ。

モレッリ方式は画家が無意識のうちに癖を出してしまう耳の形や指先に注目して鑑定するといっても、肖像画などでは、モデルの個性を写すものだから、そういう場合は意味をなさないのではないか?という質問に対しては、モレッリは、おもに神話画のようなものしか鑑定していないとのお答え。要するに得意分野限定だったということですね。

王侯貴族の個人コレクションの時代は、作品の帰属も比較的おおらかだったのに、近代国家になると、国の威信をかけてはっきりさせなくちゃってなるところが面白いですね。まあ、そのおかげで、美術史の流れがより深く理解できるっていうことですから・・・・。

とてもお話が面白かったので、記念にカタログの先生の論文のところにサインをもらってしまいました。また機会があったらぜひお話を聞いてみたいものです。
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