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No.13
2009/06/23 (Tue) 20:37:13

フランスなのに「ローマ賞」ってなんだか変ですよね。日本人にとってはヨーロッパのひとつの都市に過ぎないローマですが、キリスト教を信じる人々に取ったら、総本山バチカンがある特別な都市なんです。ヨーロッパの人々にとって、古代ギリシャやローマの文化が自分達の根っこにあるものだと思っている。そして、キリスト教化した後にはローマは聖地というわけです。だから、フランスもイギリスもドイツも引き寄せられるようにローマを目指すわけです。で、優れた文化芸術を自国に取り入れる為の拠点を、フランスはローマに作ったと言うわけ。ボルげーゼ庭園内にある、ヴィラ・メディチ荘に在ローマ・フランス・アカデミーが置かれている。現在も、ちゃんと同様のシステムが機能しているというから驚き!とにかく、優れた芸術家の卵たちが厳しい選別を勝ちぬき、ローマ賞を取ると奨学金が与えられ、フランスからローマへと送り込まれる。彼らはローマで研鑽を積み、本国に優れた文化を運ぶ、運び屋さんとなったのです。

ローマ賞全般についてはウィキペディアにあったのでこちらをどうぞ⇒ローマ賞
ローマ賞受賞者リストはこちらをどうぞ⇒英語版ローマ賞

さて、美術史を勉強すると、17世紀以降のフランスの著名な画家の生涯には必ずといっていいほど「ローマ賞」という言葉が出てくる。ローマ賞を受賞したというのもあるし、何度も挑戦したがついにだめだったとかいうのもある・・・。ダヴィッドみたいに、ローマ賞に続けて落選して、自殺を図ったという逸話をもつ人もいる。ローマ賞の目的が有望な若者にローマで研鑽を積ませ、フランスに優れた文化を持ち帰えらせるというものなので、チャレンジするにも制約があるのだ。毎年春に行われるコンクールに参加できるのは、30歳までのフランス人で独身男性でなければならない。カトリックでは、既婚者が単身赴任なんて不道徳なことは許さないので(結婚したら一緒にすまなきゃだめって言うのが常識だった。逆に別居を認めるということが、事実上の離婚に相当していたんですね~)、独身じゃなきゃだめだったんですね。30歳で受賞したら、35歳まで結婚出来ないということになりますね・・・・。ちょっとかわいそう。

コンクールは三次審査まである。一次審査は与えられたテーマから製作した小型の構想図エスキス(32.5cm×40.5cmぐらい)。ここで100人から20人にいっきにふるい落とされます。次にデッサン。一次のエスキスより大きなサイズのもので、彫像や男性モデルを使い、7時間×4回行われる。とにかく、ちゃんとした画家は男の裸体が上手く描けなきゃだめだった。今の私たちだと、裸婦ではなく、裸夫か?思うのだけれど、小文字でacademyと書いたら男性裸体画のことをいうのだそうだ。最終審査は与えられたテーマでの歴史画の製作。これが大変なんですよ。カンズメにされて、12時間以内に下絵を提出しなければならないのだ。そして、その下絵を72日間かけて仕上げるのだが、最初に提出した下絵とかけ離れた作品は失格となる。つまり12時間以内に、出されたテーマから構想を練り、完成までを見越した下絵を描かなきゃいけないのです。簡単なテーマだったらいいのですけど、聖書や神話、古典文学からランダムに選ばれてくるテーマなんですよ。事前にわかっていればテーマに相応しい場面とかをあらかじめ考えられますけどね、いきなり今回のテーマはこれって示されるのです。もしそのテーマを知らなかったらアウトです。優れた歴史画家になるには、聖書や神話、古典文学に精通し、与えられたテーマに相応しい画面構成を、短い時間で完成できる能力がなきゃいけなかったんですね。美しく見たものを写し取る技術だけではなく、物語を絵に構成する能力・・・・。本当に大変そうですね・・・・。

その3に続く
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